Candy
最後にもう一度だけ、俺の名前を呼んでくれたから…もういい。
ギュッと一瞬強く抱きしめ、そして放した。
キーンコーン……
ちょうど良いタイミングで始業の鐘が鳴る。
「あ…………こう……」
「ほら、授業遅刻すんぞ?早よ行けや」
俺はいつもと変わらない笑顔を作った。
…つもりだけど、実は引き攣ってるかも……
「………」
「悪かったな。俺のことはもう気にせんで良いから。お前授業遅れたことないやろ?ほら」
「……う、うん」
怜奈は戸惑いながら俺をチラ見して、廊下を走り去って行った。