魔女さんと青春してる僕ら


 母さんが家の扉を開くと、そこにいたのは本当に『美人』だった。

 ゆるくウェーブのかかったマロンブラウンの髪は、背中の真ん中あたりまで伸びていて可愛らしい。ぱっちりとした二重の目は、深い碧を宿していた。鼻筋もすっとしていて、唇はぷっくりと美味しそうな桃のようだ。
 あまりの完璧な『美人』に、僕たちはしばらく口を開いたままだった。

 その沈黙を破ったのは、訪問者の『美人』だ。


「隣に越してきた『魔女』の花沢メイカです。宜しくお願いします」

「まあ、まあまあ! 花沢さんとおっしゃるのね。隣に住んでる平谷です。あ、こちらは息子のツバキ」

「どうも」


 母さんに紹介され、僕は軽く頭を下げた。
 花沢さんは、僕の方を見て笑顔を浮かべた。

 ああ、本当に美人の笑顔って!
 欲望を刺激される美しさに、僕は何も言えなかった。ただ、じーっと彼女を見つめ惚けていた。


「あ、これつまらないものですが」

 そう言って彼女が差し出した物を見て、僕はハッと現実に戻ってきた。

「あらあら。ありがとうございます。あ、ツバキ」

「これ、お返しと言ってはなんですが。僕が作った筑前煮です。良かったらどうぞ」

「…………」


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