幸せという病気
第8章【夢】
第八章 夢




一週間が過ぎた頃、武は茂と会っていた。


「あの時、親父を逮捕したのが自分だったってなんでもっと早く言わなかったの」

「言って何になる」


武が茂に伺うと、茂は遠くを見つめながら静かに答える。


「そりゃそうだけど・・・」

「武。おまえ・・・自分の父親の事、憎んでるか?」

「・・・いや・・・今はそうでもないと思う・・・」

「そうか」


そしてゆったりとした口調で茂が話し始めた。



「ワシには許せない過去がある」



「・・・」



「家族を殺された過去だ」



「・・・殺された?」



武は驚きながらも静かに伺う。


「逆に聞くが、ワシのこの肩の傷・・・おまえ気付いてたんだろ?どうして何の傷か聞かなかったんだよ」


「・・・聞いて何になるの・・・」


「ふっ。聞いて何になるのか・・・聞かなければいつまでもおまえは知らないままだぞ?」


「なんだよ。性格悪いな相変わらず」


「まぁ・・・もう時期わかる」


そう言い、茂は黙り込んだ。

一方の武はわけがわからないまま、空を見つめる。





その五分後。





そこに現れたのは弘樹だった。





「なんで武がいるの・・・どうゆう事すか波川さん・・・」


「おまえこそなんでここに・・・おっさん・・・どうなってんだよ」



何も聞かされず、茂との待ち合わせ場所に来た武と弘樹は、お互いに事情が飲み込めず戸惑っている。


そして何も説明しないまま、茂が口を開いた。


「武・・・ワシの家族は、この、弘樹の親父に殺されたんだよ」


「・・・殺された?」


「いきなり何言い出すんだよ波川さん!!」


「本当の事だろ」




突然の事に、弘樹が大声で詰め寄ると、茂は静かに真相を明かし始める。





「武・・・こいつの親父はアル中の、ヤクザの鉄砲玉だ。ある事件で、ワシの家族はみんな殺された・・・肩の傷は・・・その時のモンだ」


「・・・」



その時二人は、茂の言葉と態度に何も返せない。



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