幸せという病気
「・・・まだ言ってんのか・・・妙な動きしてたらおまえ殺されるぞバカ野郎!!!」




「いちいちうるせぇんだよ!!俺が死のうが誰も悲しんだりしねぇだろ!!!」




弘樹のその言葉を聞いた茂は、悲しんだ目で聞き返した。


「・・・武もか・・・?こいつも悲しまねぇと思うか?・・・」


「・・・」


武は黙ったまま、そして弘樹は言葉が見つからず黙り込む。


茂が続ける。


「・・・おまえにも大事なモンがある。それと同時におまえを大事に思う者もいる。たったそれだけの事だ。でもな、たったそれだけの事で、生き方ってのが変わってもいいんじゃねぇか?・・・おまえがワシの為にしてる事が、ワシには悲しくて仕方がねぇんだよ。おまえと、おまえの親父は違うんだ」



弘樹は涙を隠し、やがて黙っていた武が口を開いた。



「もう・・・いいんじゃねぇか?親父じゃなくて、自分と、新しい家族だけを見つめても・・・」





それを聞くと、弘樹は涙を噛み締めて答える。






「俺の勝手だ・・・口出すな・・・」






そう言い残し、弘樹は去っていった。


いつまでも許せないその苦さを握り締め、自分自身に泣きながら。





そして、人の温かみを知って・・・。






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