幸せという病気
その頃武は、弘樹の手紙を開けられないまま眺めていた。
十分程考え、覚悟を決めてその手紙を開ける。
『お前の夢、まだまだ遅くないぞ!!!』
たったそれだけの言葉。
たった一行の言葉・・・。
「きったねぇ字・・・」
武は手紙を握り締め、声を押し殺して泣いた。
それは弘樹が亡くなってから、初めて流した涙だった。
『夢』
それに向けて、武は歩き出す事を誓う。
それは、まだ誰も知らない・・・
武を取り巻く環境、遥の病気、そして武自身・・・。
この何ヶ月の出来事が、一変する節目の夜だった――。