幸せという病気
「竜司・・・見ないでね?」

「うん。見ない見ない」

「見てるでしょ」

「見てないって」

「いいよ?ちょっとなら」

「あ、そ~ぉ?」

「殴るよ・・・?」


暗い露天風呂で、小さな灯りだけが二人を照らしていた。

湯に浸かりながら、竜司が話し掛ける。


「遥。今日は・・・楽しめた?」

「うん!すごい楽しかった!」


二人は少し距離を置き、背中を向けてお互いを見ないまま話している。


「よかった・・・」


その言葉を聞き、今度は遥が聞き返す。



「竜司は?」



「ん?・・・楽しかった・・・」



「そっかっ」



「けど・・・」



「ん?」











「切なかった・・・・」








「・・・」








竜司は、少し涙声で話す。








「遥・・・」











「ん?」












「・・・どこにも行くなよ・・・」












「・・・うん・・・」












「ほんとだな?行かねぇんだな?」












竜司は振り向き、遥に言い寄る。












「・・・どうしたの?」












「行かないって言えよ」












「・・・私は・・・」












「行くなよ!!」












竜司はそう言い、遥を抱き締めた。









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