幸せという病気
そして、武がオーディションを受けているその日の昼間、遥と竜司は病室にいた。


「雨・・・ひどくなってきたね」


そう言い、遥が窓の外を見た。


「なんか・・・時間が止まってるみたいだ・・・」

「え?」


丸椅子を立ち、竜司も窓の外を見てそう言うと、遥は何か嫌な予感が過ぎり、それを押しつぶすように小さく呟く。


「雨って・・・淋しくなるね・・・」


竜司は、ただ黙って窓の外を見ていた。

その時、竜司にも同じように嫌な予感が脳内を漂い、その嫌気に心を奪われているうちに外は暗くなり、徐々に気温が下がっていく。




やがて、午後十時四十二分。


竜司は病室を出て、下の階のロビーにいた。

そしてタバコに火を付けるその瞬間、遥の病室では誰かがそのドアをノックする。



「・・・はい」



遥は、「こんな夜に誰だろう・・・」と、不安に思いながら返事をした。



「入るぞ・・・?」



すると、扉の向こうから男の声が聞こえる。



「・・・どちら様ですか?」



遥のその問いに、男は少し黙って返事をした。














「・・・父さんだ」
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