幸せという病気
「・・・いえ。あっそぉだ。ちょっとさぁ、行きたいとこあんだけどさぁ。暇だし付き合ってくんない?」

「どこぉ?」

「墓」

「・・・一緒に死ぬって事?」

「・・・どーせならプロポーズ?って聞け」



そして二人は、武の母親の墓へ向かった。



「武、バテバテじゃん」

「こんなにきつかったっけ・・・この坂・・・」

「もう歳なんだよぉ。ってかこないだ倒れたばっかだからさ・・・大丈夫?」

「・・・あぁ」

墓に着くと、二人は水をかけ、手をあわせた。

そしてその帰り道、すみれが武に尋ねる。

「天気いいねぇ~。ねぇ、どうして来たの?今日」

「ん?まぁ・・・なんとなく」

「・・・ふ~ん」

「・・・」

「・・・ねぇ・・・」

「ん?」

「武・・・ホントに体・・・」

「あのさぁ。今度たまには、遊園地でも行こっか」

「・・・遊園地?」

「そう。あっ。ビビリだしダメかぁ」

「どっちが!?武でしょ?ビビリは」

「ハハハ。よしっ!決まりな」

「・・・うん」



やがてその日の夜、すみれは遥の病室に来ていた。

突然の訪問に、遥は心配そうにすみれに伺う。


「どうしたの?こんな夜に・・・お兄ちゃんと喧嘩した?」

すみれは小さな声でそれに答えた。

「ん~ん。ねぇ・・・武・・・元気そうに見せてるけどホントは・・・病気にかかったんじゃ・・・」

「大丈夫だよ。あの人ガサツだから」

心配させないようにと、遥は笑って冗談を言う。

そして隣で静かに聞いていた竜司が口を開いた。

「武さんは、すみれさんを悲しませるような人じゃなくない?」

それを聞き、遥は竜司の言葉に便乗する。

「そうだよぉ。ガサツだけど」

すると、曇っていたすみれの顔に笑顔が戻った。

「ありがとぉ・・・ごめんね、なんか心配になって・・・」
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