幸せという病気
「竜司~?」
「なんだよ」
詩織が寝ている竜司に話し掛ける。
「もうすぐ記念日だねっ」
「あ?そうだったなぁ」
「ねぇねぇどこ行く?」
「・・・どこでもいいじゃん?」
「・・・どこでもって・・・記念日だしさっ。どっか遠く行こっかっ」
「そうだなぁ」
「・・・ねぇ・・・竜司さぁ」
「あ?」
「・・・詩織の事・・・好き?」
「あぁ」
「・・・あぁじゃわかんないよ・・・」
「何?好きだよ」
「・・・ほんと?」
「あぁ・・・」
「・・・」
それは、竜司と詩織が付き合っていた頃の事。
始まりは詩織の片思いからだった。
「竜司君・・・あのね・・・」
「うん」
「・・・私・・・好きなんだ竜司君の事・・・」
「・・・」
「・・・だから・・・付き合って欲しぃ・・・」
「・・・今・・・彼女いるし」
「そっか・・・ごめんね?」
「なんで謝るの?」
「・・・だって」
「嬉しいよ?」
「・・・」
「・・・詩織は可愛いなぁ」
そう言い、竜司は詩織の頬を撫でる。
「・・・そんな事ないょ・・・」
そして詩織は、少し目線を上に上げ、竜司の顔を見た。
「・・・」
二人は見つめ合い、二人の唇が少しずつ近づく。
そして重なり合い、数秒経つと、詩織が顔を逸らした。
「・・・ダメだよ・・・」
「どうして?」
「・・・彼女・・・いるんでしょ?」
「・・・いるよ?」
「・・・じゃぁ・・・ダメじゃん・・・」
「詩織の事も好きだよ」
「え・・・」
「それでもダメかな」
「・・・そんなの・・・」
「何?」
「そんなの・・・ずるいょ・・・」
「・・・じゃあ・・・彼女の事も、詩織の事もちゃんと考えるから」
「・・・うん」