幸せという病気

「もぉ~!!早いよぉ・・・」

詩織は家の近所で犬の散歩をしていた。
犬に引っ張られ、少し駆け足で散歩をしていると、反対方向から竜司が歩いてくる。

「あ・・・」

詩織が気付くと、一方の竜司は携帯をいじりながら下を向き、詩織の存在に気付かない。



「・・・竜司君っ」


「あ・・・詩織ぃ」



犬を必死で止め、詩織は竜司に話し掛ける。

と、犬が竜司に向かって吠えまくった。



「おーっ・・・よしよしっ」



そう言い、竜司が犬を撫で始めると、だんだんと気を許した犬は竜司になつき始める。



「詩織んちの犬か?」

「え・・・あっ・・・そぉだよ?」

「可愛いなぁ」



犬を撫でる竜司を見て詩織は、先日の告白を思い出す。



「竜司君・・・」

「ん?・・・あぁ・・・詩織、ごめんな?こないだ」

「ん~ん?」

「・・・何?」

「え?」

「・・・竜司君・・・って」

「あっ・・・ん~ん・・・偶然だね」

「そうだなぁ」

「・・・と・・・後は・・・」

「もうねぇんだろ?」

「・・・うん・・・」

笑って竜司がそう言うと、詩織は頷いて下を向いた。

そして顔を渋め、竜司が続ける。

「お前さぁ」

「ん?」

「あいつの事どう思う?」

「あいつって?」

「ほら・・・こないだの・・・」

「・・・あぁ・・・」

「・・・ちょっと話でもしてみたら?いい奴だぜ?」

「・・・」

詩織は、それに対して何も語らず黙り込んだ。

犬を撫でながら話していた竜司は、「ん?」と顔を上げる。

そして、困った顔で詩織が口を開いた。

「・・・私は・・・」

「おぅ」

「私は・・・竜司君が・・・」

「・・・俺はやめとけ」

「え・・・?」
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