幸せという病気
その頃、武達はラーメン屋にいた。
「おい武、チャーシューやるよ」
「あぁ。ってか、親父気になんねぇの?」
「何がだ?」
「家で何やってんだろ、あの二人」
武がラーメンをすすりながらそう聞くと、父親は落ち着いた声で答える。
「明日バレンタインデーだしな」
「え?」
「チョコでも作るんだろ」
「あっ、そうゆう事かぁ・・・ってか親父、よくわかったな」
「一応これでも親だからよ」
「へぇ~」
そして武は、父親の意外な面に感心しながら家へと帰った。
次の日、遥の小学校――。
隣の席の、『赤塚 茜』 が遥に話し掛けてきた。
「遥ちゃん、チョコ持ってきた?」
「チョコじゃないけど・・・持ってきたよ?」
「えっ何なに?」
「クッキーをね・・・焼いたんだぁ」
茜の問いに照れた顔で遥が答える。
「クッキーかぁ!」
「でも喜んでもらえるかな・・・」
「大丈夫だよ!」
やがて放課後になり、遥は茜と作戦を立て始めた。
「緊張する・・・」
「大丈夫!?遥ちゃん!」
「う~・・・やっぱりやめようかな・・・」
「もう何言ってんの!!せっかく作ってきたのに。私が祐樹君呼んでくるから。ねっ?」
「えっホントに!?どこに呼ぶの?」
「どこがいいの?」
「え・・・じゃあ音楽室・・・」
「よしっ!じゃあ音楽室で待ってて!」
「・・・うん」
そして、一人音楽室で遥は、高鳴る胸を押さえきれず座り込む。
五分程して、同級生の祐樹がやってきた。