幸せという病気



その頃、武達はラーメン屋にいた。



「おい武、チャーシューやるよ」

「あぁ。ってか、親父気になんねぇの?」

「何がだ?」

「家で何やってんだろ、あの二人」

武がラーメンをすすりながらそう聞くと、父親は落ち着いた声で答える。

「明日バレンタインデーだしな」

「え?」

「チョコでも作るんだろ」

「あっ、そうゆう事かぁ・・・ってか親父、よくわかったな」

「一応これでも親だからよ」

「へぇ~」



そして武は、父親の意外な面に感心しながら家へと帰った。



次の日、遥の小学校――。



隣の席の、『赤塚 茜』 が遥に話し掛けてきた。



「遥ちゃん、チョコ持ってきた?」

「チョコじゃないけど・・・持ってきたよ?」

「えっ何なに?」

「クッキーをね・・・焼いたんだぁ」

茜の問いに照れた顔で遥が答える。

「クッキーかぁ!」

「でも喜んでもらえるかな・・・」

「大丈夫だよ!」


やがて放課後になり、遥は茜と作戦を立て始めた。


「緊張する・・・」

「大丈夫!?遥ちゃん!」

「う~・・・やっぱりやめようかな・・・」

「もう何言ってんの!!せっかく作ってきたのに。私が祐樹君呼んでくるから。ねっ?」

「えっホントに!?どこに呼ぶの?」

「どこがいいの?」

「え・・・じゃあ音楽室・・・」

「よしっ!じゃあ音楽室で待ってて!」

「・・・うん」


そして、一人音楽室で遥は、高鳴る胸を押さえきれず座り込む。
五分程して、同級生の祐樹がやってきた。

< 229 / 439 >

この作品をシェア

pagetop