幸せという病気
やがて日が暮れる頃、無事に授業参観が終わり、武と香樹は一緒に帰る事にした。

香樹達一年生のクラスは三階にあり、廊下の窓から西日がとても綺麗に見える。

教室を出ると、武は授業参観について香樹に駄目ダシをし始めた。

「香樹、もっと手上げろよぉ」

「だって、わかんないだもん」

「遥に勉強教えてもらってるだろ」

「うん・・・だってぇ・・・」

香樹は下を向きもじもじしている。

「まぁいいよ。次までには頑張って手挙げれるようにな?」

それに対して自信なさげに香樹が返事をすると、そこに授業後すぐに会議に向かったはずのすみれが、武達のもとへ走ってきた。

「あっすみれ先生!」

香樹が嬉しそうに、すみれを呼ぶ。

「あれっ?先生、会議じゃ・・・」

武がそう言うと、すみれは息を切らして話し出した。

「ハァハァ・・・ちょっとっ・・・待っててくれませんか!?すぐ終わるんで・・・」

「大丈夫ですか?」

武が呆れた感じで笑ってそう聞くと、すみれは息を整え聞き返す。

「・・・ふぅ~。大丈夫です!これから時間少し空いてますか?」

「・・・あっ、大丈夫ですけど」

「じゃぁ、十五分くらい待ってて下さい!」


そう言うと、すみれは走って会議に戻って行き、武は・・・。


「・・・告白かな・・・」


一人、妄想にひたっていた・・・。


三十分後、すみれは少し遅れてやってくる。

「すみません!長引いちゃって・・・っていうか、みんなのお茶片付ける時間入れてなかった・・・」

また息を切らして喋っているすみれを見て武は、少し大人びた感じのすみれのイメージが消えていた。

「あぁ、大丈夫ですよ」

武はそう笑って答え、三人は小腹も空いていた為、近くのファミレスに行く事にした。

「すいません、なんか引き止めちゃって」

「いや、どうせ今日は帰っても暇なんで」

店に入ると、すみれはいつものように笑顔で話しかけてくる。

「そうですか、よかった。そうだ香樹君、何食べたい?」

「ん~とぉ・・・激辛のカツカレーとぉ、オレンジジュース」

香樹がそう言うと、すみれは「激辛カツカレー」に少し戸惑いながら、武にも聞く。
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