幸せという病気
第15章【幸せという病気】
第十五章 幸せという病気




四月十四日。

その日の朝、竜司は武の部屋を訪れていた。

「今日は、遥についてなくていいのか?」

「いや、今日は・・・大事な話が・・・」

そう言い、力の無い声で竜司が武の向かいに座ると、武はコーヒーを出しながら竜司を気遣う。

「なんかおまえ顔色悪いよな最近」

「・・・その事なんですけど」

「その事?」

武が聞き返すと、暗い顔で竜司は話し出した。

「最近、頭痛が激しくて・・・なんかちょっと心配なんです」

「病院行ったのか?」

「いえ・・・」

その瞬間、武の脳裏に、発作で倒れた瞬間の遥の映像が走る。

「・・・おまえ・・・幸せ病なんじゃねぇのか・・・?」

「・・・だけど・・・そうだとしても、なんで俺は遥に比べてこんなに症状が出るのが遅いんですか・・・」

「わかんねぇけど・・・ただちょっと思った事があってさ・・・遥が死にかけた時、夢ん中で母さんに助けられたって言ったろ?」

「はい」

「それで気付いたんだけど・・・」

「なんすか?」

「幸せ病って・・・治るんじゃねぇかな」

「・・・でもどうやって・・・?」

一瞬、フラットにした武の脳裏に真実が走り始める。

「遥が初めて発作で倒れた時・・・本当はおまえも病気にかかってた・・・幸せ病ってのは・・・タチの悪い潜伏生物みたいなモンでさ・・・」

「・・・はい」

「遥が病気で苦しむ姿を、一番傍で見てるおまえには・・・発作なんか、特に必要無いって事だよ」

「え・・・?」

< 250 / 439 >

この作品をシェア

pagetop