幸せという病気

すみれは電話を切ると、目を瞑って武の無事を祈り、父親の病室へと戻った。

そして武はその後少し歩き、以前にすみれと訪れた高台の夜景が見える場所に腰を下ろす。




その幾つもの灯りを眺めると、ゆっくり目を閉じた。




遥が・・・その脳裏に現れる。







「私、好きな人できた」






あの時、おまえが前に進むの・・・止めておけばよかったかもな・・・。





「先生、恋愛出来ないって言ってた。病気が恐いからって・・・確かに恐いけどさ、俺はおまえをすごいって思ってるよ?それを先生にも言ったんだよ・・・あいつは恐さを知ってて前に進んだって。だから、おまえのそうゆう真っ直ぐなとこすごいいいと思うよ?俺」

「・・・あのさ、いいって何?」

「何って・・・」

「・・・病気になっちゃったら終わりじゃん!真っ直ぐ!?そんなんで死んでたらただの馬鹿だよ!わかったような事言わないで!」

「・・・遥・・・」

「・・・・恐いんだよ・・・お兄ちゃん・・・死んじゃうんだよぉ??恐いよぉ・・・死ぬのやだ・・・」

「・・・ごめんな・・・ごめん・・・」

「死にたくないよぉ・・・私・・・せっかく恋出来たのに・・・せっかく・・・人を好きになれたのにさ・・・生まれて初めて・・・幸せだなぁって・・・」

「・・・うん」

「そう・・・思えたのに・・・」





あの時・・・おまえの弱さをもっともっと解ってあげられればよかった・・・。






「みんな勝手だよ!私一人だけじゃないって、なんで簡単にそんな事言うの!?もう辛いんだよ!!心配してるなら毎日一緒にいてよ!!もう・・・やだよ・・・苦しんで苦しんで・・・寝る時、このまま死ぬんじゃないかとか・・・テレビ見たって、また幸せ病で亡くなったとか・・・結局私は死ぬんだよ!!!!」
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