幸せという病気
「お兄ちゃん・・・」
「遥は中に入ってな?寒いから・・・」
「嫌だ・・・」
「ホントにすぐ泣くなぁ遥は。お母さんまだ怒ってた?」
「遥がホントの事言う・・・」
「いいっていいってぇ。遥はお兄ちゃんが守ってやるからなっ」
「どうして?」
「そりゃぁ・・・お兄ちゃんだから。遥は女の子だから幸せにならなきゃいけないんだってさっ。お母さんがそう言ってた」
「お兄ちゃんは?」
「お兄ちゃんは男だから、女の子を守るんだよ?」
「ふ~ん。お兄ちゃん。幸せってなぁに?」
「・・・幸せってのは・・・ん~・・・なんだろぉ?」
「お兄ちゃんでもわからないのぉ?」
「・・・でも、いい事なんだよ?幸せって。遥は、お兄ちゃんが幸せにしてあげるよっ」
「わぁ~い」
やっぱり・・・。
あの時の約束、守らねぇと。
その記憶へと舞い戻るかのように・・・。
キラキラと光る星を仰ぎ、武はその場でまた、意識を失くした。
この世でたった一人の妹へ向け・・・。
その命を夢の中へと投げ込む。
そして・・・その体力と精神力は、もうすでに限界を迎えていた――。