幸せという病気

病室では竜司が名前を呼び続け、ただ現実に存在する生と死だけが重くその空間にのしかかる。











「・・・頼むよ・・・遥・・・死なないでくれ・・・・・頼む・・・」


















しかし意外にもその時間は、ゆらゆらと舞う桜のせいで・・・





















ゆっくりと過ぎているかのように見える。





























そして夢の中では、遥から武へと・・・一片の小さな花のプレゼントが贈られていた。












それはとても綺麗に輝きながら、時空を超えて現実へと降り注ぎ、横たわる武の胸元へひらひらと舞い落ちる。














最後に贈られた、その花とは・・・。



























時間さえも魅了する程に美しい、今宵の夜桜だった――。































それは、夢の中で描いた分・・・いつもより一段と綺麗に煌いて見える。
















やがて風が吹くと、



















その一片は・・・幼かった頃の二人の想いへと生まれ変わり、空へと舞い上がる。
























そしてその小さな想いは、生死を彷徨う遥の意識をほんの少しだけこの世に引き戻した。

























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