幸せという病気
武がそれに続ける。


「覚悟か・・・それは自分の生き方への覚悟じゃないか?生き方に恥じたくないからそう出来るんだ。でもそれは弱さと背中合わせなんだけどな・・・俺はおまえらと違って守るモンがある。そりゃ確かにびびってるのかもな・・・羨ましいよおまえらが」

「勘違いするな、俺にも家庭があんだ」



弘樹には武の今の心境がわかっていた。

自分と同じように、自分の身より遥、香樹の事を想っている武が誰よりもわかった―――。




次の日、昨日の雨が嘘のように空は青一色だった。

風邪をひいていた遥は昼前に目が覚め、昨日の熱はすでに下がっていた。

そして台所でお茶を一口飲むと、竜司と傷ついた犬の事が気になりだす。


「香樹、おはよぉ」


小学校も高校も一時学校閉鎖になり、遥は外に出ようと香樹に声を掛けた。

遥の頭の中に竜司が働く動物病院が浮かび上がる。


「どこいくのぉ?」


可愛いらしい眼差しで香樹が遥を見つめると、


「ん~・・・お散歩行こっ?」


遥はそう言い、香樹を連れて動物病院へ向かった。


二十分程歩き病院に着くと、院長が庭の手入れをしていた。

そして遥が話し掛けると、院長は昨日犬を運んできた子だと気付き、笑顔で受け答える。


「あっ昨日の。怪我はすっかりよくなったよ?あの子犬」


遥は、あの犬は竜司が助けた犬だと院長に説明し、その後、院内で元気になった犬の姿を見ると嬉しくなり、竜司の喜ぶ顔を思い浮かべた。

すると、院長が遥にお願いをし始める。


「竜司はまだ病院らしいんだ。診てきてやってくれないか」
 
「え・・・でも・・・」

「・・・お願い出来ないかな・・・?」

「・・・はい。わかりました・・・」


そうして、院長の言葉に少し戸惑ったが、遥は竜司が入院している病院まで見舞いをしに行くことにした。

というより、その為に香樹を連れて外に出た自分自身に違和感を感じ、少しドキドキしていた。









何故か竜司が気になって仕方なかった・・・。










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