幸せという病気
昨日に続き、病院内は怪我人などで溢れ、遥は香樹の手を握りながら竜司の病室へ向かう。

やがて病室の前に来ると心臓が早くなり、緊張が増してきた。


「どーしたの?お姉ちゃん」


ドアの前でドキドキしている遥を見て、香樹が不思議そうに伺う。


「ん?・・・さっきの犬を助けてくれたお兄ちゃんがこの部屋の中にいるんだよ?」

「ふ~ん」


緊張しながら遥が説明すると、よくわからない感じで香樹は返事をし、今度は「入らないの?」と無邪気に尋ねる。


「ん~・・・どうしよぉ・・・」


そして悩みながら遥は、後ろにあった長椅子に腰掛けた。



「大丈夫?お姉ちゃん」






香樹が気にかけたその時・・・。





ガチャッ。





竜司の入っている病室のドアが開き、遥はびっくりし
てふいに勢い良く立ち上がる。





「あっこんにちはぁ~」





椅子に座っている遥に挨拶をし、ナース室の方に向かっていくのはどこの誰だかわからない中年男性だった・・・。




「もぉ~・・・びっくりさせないでよぉ・・・」




遥は拍子抜けしてもう一度椅子に座り、ため息をつきながら下を向く。



「ねぇねぇ、お姉ちゃん?どーしたのぉ?」



普段と違う遥を見て、香樹が呼び掛けると今度は、若い声で誰かが遥に話し掛けてきた。





「あれ?遥ちゃんだっけ?」






座ったまま上を見上げると・・・













いつの間にかそこには竜司が立っていた。


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