幸せという病気
「俺は遥の事が好きだって」
「・・・うん」
「・・・遥・・・付き合お?」
そして遥は小さく頷いた。
見守るように燃えていた線香花火が落ちると、辺りは真っ暗になり、二人はキスをする。
そして、そんな二人を見つめる上弦の月が、夜の海に怪しげに映っていた・・・・・。
それから二週間――-。
武は、スーツに着替えていた。
特に何も話を聞いていなかった遥が伺う。
「どっか行くの?お兄ちゃん」
「刑務所だ」
「・・・刑務所って、強盗?・・・そりゃ確かに貧乏だけどそんな事・・・えっ?恐喝かな・・・いや・・・はっ!殺人!?誰を!?ねぇ!誰殺したの!??」
「おまえを殺そうか・・・」
ネクタイを締めながら武が返すと冷静に遥が伺う。
「・・・お父さん?」
黙って武は頷き、普段履きなれない皮の靴を履いて出て行った。
そんな武を見て祖母が遥に話し始める。
「お父さんを見て育ってるんだね武は・・・。そんなに会話もなかったから、見て覚えるしかなかったんだろうよ・・・大事な時はいつもスーツで・・・お父さんもスーツばかりだったからね・・・」
祖母の言葉に遥が返す。
「そっくりだよ。別に普段着で行けばいいのに・・・なんかそうとう覚悟があるんじゃない・・・?」
祖母はそれを聞くと笑って話し出した。
「男にしかわからない世界があるからね。女には踏み込めない場所があるものだよ・・・まぁでも結局・・・男は女に救いを求めてくるから。その時は、ただ側にいてあげるだけで十分なんだからね?」
「うん・・・」
そして武は父親に会いに向かう。