幸せという病気
そして、次の日。
「おはよっお兄ちゃん」
「あぁ、おはよ。何、元気いいね」
いつもより元気がいい遥に、顔を洗いながら武は尋ねた。
「竜司とデートか?」
「うんっ」
「そうかぁ。なんかあれだな、おまえに彼氏とか出来ると、なんか違和感あるな」
「・・・」
「なぁって」
「・・・」
「おいって・・・どっか行くの早いな。便所か?」
武は、顔についた水をタオルで拭く。
そして武が振り向いた目の先には・・・。
「・・・おいっ!遥ぁ!!」
鼻血を出して倒れている遥の姿があった・・・。
「・・・おいっ・・おい!遥ぁ!!どうしたおいっ!ばあちゃん!ちょっと来てくれ!遥が!!」
祖母が駆けつけ、香樹は恐さからドアに隠れて見ている。
遥は意識が無く、救急車で病院に運ばれた。
その車中・・・。
「貧血とかか?」
「そんな軽度のものならいいけど・・・意識がないからねぇ」
武が祖母にそう聞くと、祖母が不安げに答える。
「・・・頭打ったからだろ。学校行って家事だからさ、そりゃ体にくるよなっ」
「そうだねぇ・・・」
その時、武の頭にも祖母の頭にも幸せ病があった――――。