幸せという病気
運命は誰にもわからない。
良い出会いもあれば悪い出会いもある。
ただそれは、本人が良いと思うか悪いと思うかの違いなだけかもしれない。
人間が出会う事には何らかの意味がある。
親と子供、兄弟、姉妹。恋人との出会い・・・。
例え辛い出会い、別れをしても、それは自分を成長させてくれる出会いだろう。
その人から何かを吸収したり、何かを教わったり・・・。
人間は経験出来ないことを経験しようと生きている。
だから欲があり、気持ちがある。
武は父親から教わり、竜司に叩きこんだ。
そして竜司はまた、遥に何かを与える。
武は折れそうな心で必死にそれに気付き、その先を歩き出していた・・・。
六日後―――。
武と竜司は遥の入院している病院にいた。
「おまえギターとか好きか?」
武が喫煙ルームで竜司に尋ねる。
「いや、やった事ないっすよ。出来るんですか?」
「出来るも何も俺の夢はプロだからな」
「デビューするんすか?サイン下さいよ」
「・・・いやいや、デビューもクソも・・・サインて言っても・・・まだオーデションとか受けてないからさぁ」
「受けましょうよ。絶対いけますよ!」
「おまえ見てねぇだろ!?俺のギターも唄も聞いた事ないのに何がいけるだよ!」
「・・・すいません・・・」
「まぁでも・・・そろそろやろうと思うんだ・・・」
「応援しますよ」
武はこの一週間弱、遥の事、今後の自分の事を常に考えていた。
「俺さぁ、自分の家族を幸せだって思ったんだよ。でも遥がこうなって、その幸せな家族が壊れた。だから病気にならなかったんだろーな」
そんな武の言葉に、竜司が反論する。
「幸せな家族・・・壊れてませんよ・・・?武さん、こんなに遥の事思ってるじゃないですか。今までもこれからもずっとこの家族は繋がってますよ」