幸せという病気
言葉さえも浮かばず、遥の事を思い、そして自分が辛くて切なくて・・・悲劇に浸る余裕さえも持ち合わせてなかった・・・。



やがて武は、そのまますみれを家まで送って行った。




その玄関先。



すみれが尋ねる。




「・・・もっと早くに出逢ってたら・・・」


「・・・ん?」


「・・・私がこんなにずるくなかったら・・・」


「・・・」





「・・・こんな時・・・ギュってしてくれた・・・?」









「・・・うん・・・」












「・・・ごめん・・・変な事・・・」












「・・・ずるいのは・・・俺だから」









「・・・」











「・・・ギュッてしてやれないのは・・・俺のずるさだから・・・」








そうして、二人は互いの家へと帰った。

やがて武は部屋に着き、落ち着くと、


「今日は遥の顔見てねぇなぁ・・・」


そう思い、遥の部屋のドアをノックする。


「はぁーい」

「入るぞ?」


明るい声で遥が返事をすると、武は部屋に入り、ベッドに腰を下ろした。


「すみれ先生と会ってきたんでしょ~?」


変わらず、からかうように遥は武に伺う。


「うん・・・振られたんだってさ?先生・・・彼氏に・・・」


「そうなんだ・・・」


「・・・どーしたの。いつもみたいにチャンスじゃん!とか言えよ・・・調子狂うな」


「・・・言えないよ・・・幸せになったら二人とも・・・」


「病気にかかるって?」


「・・・」


「・・・先生に話したんだ。おまえの事」


「そう・・・」


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