幸せという病気
次の日。




「香樹―。雪かきしよ、雪かき」

昨日から降っていた雪が積もり、辺りは一面真っ白だった。


「雪だるま作りたいー!!」


香樹が武にごねる。


「じゃあ、雪かき終わったらな?」

「嫌だー先に作るぅ」

「お姉ちゃん怒るぞっ?わがままばっかり言うと」

「・・・じゃぁ十一時に作ろっ?」

「よしっ。じゃぁ二時間雪かき頑張るぞ?」

「うん!」


約束通り、二時間程雪かきをすると、二人はやがて雪だるまを作り始めた。

そして、竜司と遥が助けた犬の名前は「伊崎ポチポチ」と名付けられる。

ありふれたポチという名を二つくっつけてみたらしい。

そのポチポチは、雪に戯れ、キャンキャンと吠えていた。

香樹が一人で懸命に雪だるまを作ると、ポチポチが走り回って壊す。

そのポチポチを香樹は怒りながら、追いかける。

そんな姿を武は嬉しそうに見つめていた。


疲れて家に帰ると、そこには新雪に二十七センチ程の足跡と、小さな足跡・・・そしてもっと小さな足跡がまばらに残っていた。




その一瞬一瞬の光景に人々は生きて存在し、やがて姿を消す。


そして明日になれば、そこにいたという証の足跡さえも消えてしまう。



ただ・・・それは人々の想い出として一生残る。




想い出に残せるという力があるのであれば、たくさん残せばいい。

そしてたくさん残せたなら、その想い出達には感謝しなければならない。



武は寝転びながら、すみれとの事を思い出していた・・・。





一方その頃、病院には竜司が来ていた。


「遥・・・明日籍入れようか」

「・・・」


遥は黙って本を読んでいる。


「・・・ねぇ」

「ん?」

「明日籍入れようかって・・・」

「・・・もうちょっと後に・・・しよ・・・」


暗い声で、遥は話す。

それについて竜司は聞き返した。


< 94 / 439 >

この作品をシェア

pagetop