龍の女神となるべき姫【上】
「うっさいわ!!
智と亜美に負けてるくせに」
「さらに僕にも負けてる秋都に言われたくありませーん」
「何やねん、この猫かぶり!!」
「何だと、この赤男め!!」
「ふっ。赤いの髪だけやんけ」
2人の喧嘩が面白くて、今まで黙って見てたけど。
そろそろ、うるさい。
それに眠い。
もう外は真っ暗だしね。
『ふわぁー』
「眠いんですか?」
『うん……』
「家どこだ?送る」
悠基が、読んでいた雑誌を置いてそう言ってくれたけど。
『ありが……』
そのまま眠ってしまった。
意識のない私は知らなかった。
悠基の前で、あの人の名前を泣きながら呟いていたことを―――