あたし、脱ぎます!《完》



「疲れちゃったのかな?

東京って
人が多いから

慣れないと疲れちゃうからね。

会計して来るから、
待っていて」



淳平くんはレジに
向かって歩き出した。


あたしも
淳平くんを追い、

お金を払う背中を眺める。



淳平くんって
どうしてこんなに優しいんだろう?


別に
気分が悪くなったわけじゃないよ。


勝手に
妄想が悪い方へ突っ走っただけだよ。



「お待たせ。

近くにカフェがあるんだ。
そこに行こうか?」



淳平くんはそう言って、

あたしの持っていたボストンバッグに手をかけ、

自分に引き寄せた。



「こんな重いカバンを持っていたの?!
だから
気分が悪くなっちゃったんだよ。

持ってあげるから」



あたしの胸は
ドキドキを通り越して、

停止寸前だった。


だって、

カバンを持つ手が
かすかに触れたのだ。


そして
あたしのために、

荷物を持ってくれた。


触れた指も

温かくて、

優しさもジンっと染みたんだ。

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