あたし、脱ぎます!《完》
「……淳平くん。
あたしね
これから東京は頻繁に来るんだ」
スクランブル交差点で
信号待ちをしているとき、
雑踏に
掻き消されそうな声で呟いた。
淳平くんは
あたしの言葉を聞いて
「マジ?」と顔を向けた。
「うん。
だから、また連絡したら会ってくれる?」
「何だ。そうなんだ……」
あたしの質問とは別の答え。
やっぱり
さっきの社交辞令だったのかな……。
信号が青になり、
一斉に
たくさんの人が歩き出した。
四方八方に向かって歩き出す人たちの中で、
動こうとしない淳平くんに、
「あれ?」と
振り返ると、
淳平くんは小さく息を吐いた。
「……あ、あのさ。
5分、時間ちょうだい」とあたしの手を握り、
歩いてきた道とは
別の道を歩き出した。
え?
どういうこと?
それに……
あたしと淳平くん、手を繋いでいる!