あたし、脱ぎます!《完》
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その日は朝から
グレーの空が広がり、
今にも
雨が降りそうな天気だった。
梅雨独特の外気が
ジメジメとさせる。
東京も似たような天気で、
これから水着になる
あたしの気持ちを表しているようだ。
駅の改札口で
また真鍋さんと待ち合わせ、
車でスタジオに向かう。
車のフロントガラスに
ポツンポツン……と
水滴の当たる音がした。
「天気予報で
今日はずっと雨だって」
ワイパーを作動させる真鍋さんに、
あたしは質問を投げかけた。
「真鍋さん?
……もし、
あたしが売れなかったら……
どうしますか?」
「え?どうしたの?突然?!
まだ始まってもいないのに」
「ん〜〜何となく、
どうなのかな?と思って」
「そうだね。
もし売れなかったら、
事務所としては赤字になるね。
投資した分は回収できないと。
今、うちの事務所では
6人のタレントを抱えているけど、
皆が
すぐに売れたわけじゃないんだ。
努力があって、
売れたところがある。
だから萌香ちゃんにも
これから一生懸命頑張ってもらいたいんだ」
真鍋さんは
ハンドルと左に切ったとき、
あたしのほうをチラッと見ると、
「芸能界は
礼儀を弁えていたら、大丈夫」と
小さく微笑んだ。