あたし、脱ぎます!《完》



カメラマンが
ベッドから降ると、

あたしは
魔法から解かれたような感覚になった。


さっきの
気持ちの良い空間は

何だったのだろう。


そして
どんな状態になっていたのか、

思い出せない。


ERIさんから
バスローブを受け取り、
袖を通すと、

パソコンに駆け寄った。

画面には
さっきまでのあたしが

映し出されている。



……こ、これが、あたし?



見たこともない
大人びた表情で見つめるあたしがいた。


光のマジックなのか、

メイクのせいなのか、

それとも
あたしが作り出したものなのか……

分からない。


でも
ここに映っているあたしは、

数分前の
永井萌香なのだ。



「君、
初めての割には、
良い表情するね。

要求しているものを
作り出す、

素質があるよ」



カメラマンが
あたしに向かって声をかける。



「あ、ありがとうございます。

気がついたら、
世界に入り込んでいたというか……」



「勘が良い証拠だね。

女優になったほうが良いよ」



「女優?!」



演技なんか

全然やったことがない。


小学校の学芸会で
村人Bとか、
妖精4の経験しかない

あたしが女優?!



その後も
撮影は順調に進み、

最後の
カットを撮り終わった時には

16時を回っていた。


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