あたし、脱ぎます!《完》



既に暗くなった空に
向かって、

傘を差す。


人通りの少ない道を

何も言わず歩いているあたしたちを

通りすぎる車が
ライトを照らして行く。



「何だか、

嫌な気持ちになっちゃったね……」



沈黙を破るかのように、

淳平くんが
小さく呟いた。



「ううん。大丈夫……。

きっと
理くんにも考えがあるんだよ。

でも、
ホストが楽しい!って、

言い切る理くんも羨ましいかも」



「確かに
やりがいを見つけている奴なんて、

そんなにいないからな。

……萌香ちゃんは
やりたいこととか……

あるの?」



「えっ?」



このタイミングで
言っちゃったほうが良いかな?


まだ
はっきりとしたものじゃないけど、

これから
頑張ろうとしていること。


芸能界で
グラビアアイドルになること。




「……あ、あ、あのね。

実は……」



「あ!
ちょっと待って。

コンビニで
トイレ借りて来て良い?」



淳平くんは
我慢していたのか、

あたしの言葉を遮って、

近くの
コンビニに駆け込んだ。

< 147 / 383 >

この作品をシェア

pagetop