あたし、脱ぎます!《完》



……ドキドキドキドキ。



今にも
心臓が飛び出しそう。


今まで生きて来て、
こんなに緊張することあったかな? 



いや、初めて!!


だって、
夢に見た淳平くんとの初キスだもん!!




「そこ!!!

何やってる!?」




えっ?



あたしたちは
同時に振り返ると、

そこには
作業着を着た

白髪交じりの
用務員らしきオジサンが立っていた。


眉毛を
“へ”の字にして、

こっちを見ている。



「あ、あっ!すいません!!
今、出ます!!

……萌香、行こう!!」



「……う、うん」



淳平くんとあたしは
逃げるようにオジサンの横を通り抜け、
廊下を走り出した。


誰一人すれ違わない長い廊下。


真白な壁と窓から差す西日。


そんな空間を走り抜けるあたしたち。



「ここなら大丈夫だよ。

いやぁ、ビックリした」



大きな大学は
迷路のようになっていた。


そんな迷路の出口を差すように、

淳平くんが
「こっち」と歩き出す。


階段を上がり、
薄暗い場所に辿り着くと、

大きな鉄の扉を開けた。


ガシャと
音を立てた扉の向こうには、

コンクリートが広がる屋上があった。


急に明るい場所に
来たせいで、

目がかすんでしまう。

< 164 / 383 >

この作品をシェア

pagetop