あたし、脱ぎます!《完》
「俺、この場所、好きなんだ。
高校と似てない?」
あ、確かに……。
高校よりは
大きくないけど、
コンクリートの形も
緑色のフェンスも、
そして
遠くのほうに見える山も……
あ、あれ富士山!!
うちの高校からも
富士山が見えていたね。
東京でも見える場所があるんだ。
「似てる!!
富士山が見えると、
地元を思い出すね」
「萌香とこうやって、
この景色見ることが出来るなんて……。
嬉しいよ」
あたしの横顔を見ながら、
淳平くんが体を向き返した。
そして
あたしの腰に腕が回すと、
ギュッと
力いっぱい抱き締めた。
痛いなんて、感じない。
もっともっと強く
抱き締めて欲しい……と
欲張りになってしまう。
遠くから
野球部の掛け声や
バッドのカッキーンという音が耳に届く。
「……さっきの約束」
耳元で囁く淳平くんに、
あたしは「うん」と小さく頷いた。
「じゃ、目、閉じて」
ゆっくりと
顔を近づける淳平くんに
言われるまま、
目を閉じた。
あたしのファーストキスは
淳平くんなんだね。
大好きな人が
初めてなんて、
あたしは幸せ。
……ドキドキドキドキ。
ゆっくりと重なり合う唇。
淳平くんの
厚みのある唇が
あたしのすべてを奪って行く……
そんな感覚だった。
優しい気持ち。
世界中の幸せを手にするようなキス。
そんなキスをくれる淳平くん。
あたしは、
淳平くんが世界で一番大好きなんだ。