あたし、脱ぎます!《完》
「これぐらい
上げたほうが可愛いわ。
後で直しておくから、
ちょっと待って」と
安全ピンを止める。
水着に着替えた時も、
「胸、キツくない?」と
あたしの背中に周り、
フックを調節する。
女性と違って、
ゴツゴツした男性の手だと分かるんだけど、
平気になっているのは、
山根ワールドに
入り込んじゃった証拠かな。
衣装が決まると、
山根さんは
「次の現場があるからごきげんよう」と言って、
事務所を出て行った。
一瞬にして
事務所の空気が変わり、
あたしたちは
笑いだしてしまった。
「山根さんって不思議な人。
あたし、
大好きになっちゃった♪」
「私も!!楽しい人!」
愛美ちゃんも
山根さんにハマったみたい。
そんなあたしたちを見て、
真鍋さんも
満足そうな笑みを浮かべ、
「これから
お昼ごはんでも行こうっか?」と
車の鍵を指でクルッと回した。
「行きます!!
あたし、真鍋さんに話しておきたいこともあるんです」
そう。
あたし、真鍋さんに
内緒にしていることがある。
淳平くんのこと……
話しておかないとね。