あたし、脱ぎます!《完》



「永井さんには
教室の模擬店を手伝ってもらいたいんだ。

だから男子と一緒に
メイド服に着替えてくれる?」



土橋くんは
企画書を持ちながら、

黒縁メガネの奥を光らせた。



「えっ?あたしも?

お好み焼きを作る係じゃないの?」



「急遽変更。

永井さん目当ての客が
来るはずだから、

メイドをやってもらいたいんだ。

そのほうが
お店も繁盛するし。

お願い出来るかな?」



土橋くんは
後期の生徒会に立候補すると噂で聞いた。


各クラスの学級委員同士で

売上を競っているのだろう。


でも
あたしだけメイドになるのって……

何か変じゃない?



「萌香は
メイドになったほうが良いよ。

そしたら
男の客がどんどん来るし」



佳代は
袖を捲り上げながら言った。



「んん……。

でも女子一人だけ

メイドなんて恥かしい」



「何、言っているの!

水着になるより、
メイド服のほうが肌は隠れるよ!」



他のクラスメイトも

「着たほうが良いよ!」という口々に言った。



先週、皆が作業した日、
あたしは仕事があったから休ませてもらったんだよね。


だから
ワガママも言えないし、

着るしかないかぁ……。


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