あたし、脱ぎます!《完》


「じゃ、萌香を借りるよ」



淳平くんは
あたしの手を握り、

階段を駆け上がる。


あたしも
身を任せるように

階段を駆け上がった。



重い鉄のドアを開けると、

昼下がりの太陽が広がっていた。



校庭では
模擬店の掛け声や

漫才ステージで
ぎこちないボケとツッコミのやり取りが

屋上まで響いていた。



さすがに屋上は
誰もいない。

皆、文化祭に夢中だからね。



「何だか、
久し振りに来ると、
疲れちゃったな。

……ここに座ろうぜ」



淳平くんは
ちょうど日陰になったベンチに
腰を下ろし、

「ふ〜」と息を吐く。



「やっぱり淳平くんは
人気者だね。

あたしもヤキモチ妬いちゃった」



「え?マジ?
萌香もヤキモチ妬いてくれるの?

……何だか嬉しいんだけどぉ」と

ニンマリとする淳平くん。



「俺も
ヤキモチ妬くのって初めてかも。

前の彼女のときは

“ヤキモチ妬いてよ”って
言われてたぐらいだから。

まぁそれだけ
萌香のことが好きってことか」



淳平くんは
そう言って、

あたしの肩に腕を回した。



肩から全細胞が
淳平くんに染まっていく。




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