あたし、脱ぎます!《完》



「はい、もしもし」


真鍋さんには
淳平くんとデートに行く報告はしていた。



「もしもし?
萌香ちゃん
今、大事な話をするから、

しっかり聞いて欲しいんだ」



深刻そうに話す真鍋さんに

「大丈夫です」と
答えるが、

疑問も抱く。



「実は
CMのオーディションに
書類を出していたら、

スポンサーが
萌香ちゃんを気に入ってくれたんだ。

それで
申し訳ないんだけど……

今から、
そのCMのキャスティング会社に
行けないかな?

もう一人
候補に挙がっている子がいるから、
今のうちに顔だけでも見せておきたいだ。

……今、どこにいるの?」



あたしは
ケータイを持ったまま

淳平くんに視線を向けた。


横で電話を待つ
淳平くんが

「ん?」と、あたしを見る。



「……ディズニーランドに行こうと、
今、駅を降りたところです」



「申し訳ないんだけど、
六本木まで来られるかな?

今日の穴埋めは必ずするから」



真鍋さんも
外を歩いているのか、

電話の向こうで
車が通る音が聞こえた。


慌てて
外に出た雰囲気が伝わってくる。

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