あたし、脱ぎます!《完》



「萌香ちゃん?」と
切り出す真鍋さんは

深刻なことを話す
口ぶりだった。



「淳平くんのことだけど、
仕事を理解してくれて

良い彼氏だと思ったよ。

でも
萌香ちゃんはアイドル。

彼は普通の大学生だ。

だから
価値観のズレが
これから出て来ると思う。

その辺のこと
理解してもらうのって……

大変かもしれない」



早い話、
アイドルと恋愛するのは

難しいということを言いたいのだ。



でもあたしは
淳平くんがいるから
頑張って行けるんだ。


大切な存在なんだ……。




佐藤さんには
「大丈夫です。
うれしいですよ」と

笑顔で答えるあたしは窓の外を眺めた。



今頃、
淳平くんは
大学の体育館に行っているのだろうな……。



「萌香ちゃん?」



真鍋さんが
書類をまとめながら問いかける。



「これから
NAMIEの撮影現場に行くけど……
送って行こうか?」



「え?」



「彼のところに行きたいんだろう?

そんな顔されていると、
こっちが悲しくなるよ。

アイドルは
笑顔が大切なんだから!」



何でもお見通しの真鍋さんには敵わない。


あたしは
本物の笑顔で頷いた。


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