あたし、脱ぎます!《完》



「おい!待て!!」



涼しげな風が吹く
のどかな公園に

淳平くんの声が響く。


周りの
家族ずれやカップルも
「何事?」とこちらを振り向いた。



淳平くんは
必死に逃げる男を

全速力で追いかけると、

その男性の
襟元に手を伸ばし、力強く掴んだ。


そして
思いっきり引っ張った。



……すると、

男はその反動で
体勢を崩し、

のけ反るように後ろ向きで倒れ、

尻もちをついたのだ。


そして
そのまま後頭部を

コンクリートに打ち付けた。



「痛てぇぇぇぇ〜!!!」



転んだ男性は声を上げた。



「おい!!! 

さっきの写真、全部消せよ」



「痛てぇぇ」



男性は頭を抱えたまま、

淳平くんの
呼びかけに反応しない。



あたしは
2人の傍に近づき、

男性を覗き込む。



周りの人も
こちらを指差しながら
不審そうに見ていた。



コンクリートに
打ち付けられた頭を
押さえている男の手が

一瞬、離れたとき

赤い液体が

手のひらに染まっているのに気がついた。



血だ。



一瞬にして

“ヤバイ”という気持ちが過った。



「……淳平くん、

この人、血、出てる…。


どうしよう……」



淳平くんも

動揺しているのが分かった。


さっきまで
怒りに満ちて
息を切らしていたのに、

今は呼吸を忘れ、

真っ青な顔で男性を見ている。







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