あたし、脱ぎます!《完》
「あ、じゃ……
俺はここで失礼するよ」
「え?何で?これからバイト?」
「あ、うん。
そう……。ゴメン」
寂しそうに言う淳平くんは
車内の真鍋さんに、
「今日は本当にすいませんでした」と頭を下げた。
「気にしなくて良いからね」と
明るく言う真鍋さん。
「じゃ、また連絡する」
「あ、うん……」
返事をする淳平くんと
一瞬、目が合うが、
気まずそうに視線を逸らし、歩き出した。
その背中を見ていると、
胸が痛い。
「萌香ちゃん?車に乗って」
後ろ髪引かれる思いで
車に乗り込むと、
あたしはケータイを開き
“新規メール作成”のページを開いた。
でも指が動かない。
同じ動作を
何度も繰り返していると、真鍋さんが
「淳平くん、
かなり気にしているね。
今日は
彼も色々あって疲れたんだよ。
事情徴収なんて、滅多にないから」と言った。
真鍋さんは
淳平くんを「男らしい」と
誉めていたが、
当の本人は
“自分が迷惑をかけた”と
気にしている。
淳平くんは何も悪くない。
あたしのことを守ろうとしただけ。
流血する男性を横に
「萌香の頑張って来たこと
が無駄になる」と
あたしを逃がしてくれた。
でも……
あたしが
グラビアアイドルになっていなかったら、
こんな事は起きなかったんだよね……。