あたし、脱ぎます!《完》


「萌香お帰り♪」



一ヵ月ぶりに
帰って来た我が家で、

お母さんとお婆ちゃんが
玄関まで出迎えてくれた。



「ただいま」



久しぶりの我が家なのに、
明るい声が出ない。


車中で
お父さんからも元気がないと
心配されたが、

素っ気ない返事をしただけだった。


夕食時に
東京での生活を
根掘り葉掘り聞いてくるお母さんに

「うん」とか
「ううん」と
テキトーな受け答えをして、

すぐに
自分の部屋の閉じこもってしまった。



本当は
もっと楽しい食卓にしたかったけど、

明るく話す余裕などなかった。



それは電車の中で、

淳平くんから一通のメールが届いたからだ。



『話したいことがあるから、
落ち着いたらメールして』



絵文字もない、
シンプルな文に胸騒ぎがした。



何だか、
恐くてすぐにメールをする気分になれなかった。



ベッドの上で
ゴロゴロとしていると、

♪〜♪〜♪〜と
ケータイが鳴り出した。


ディスプレイを覗くと
淳平くんからの電話だった。







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