あたし、脱ぎます!《完》


川の流れを
ジッと見つめる雄介は、

夏休み中に
金のメッシュを髪に入れて

見るからに
バンドマンの雰囲気が漂っていた。



「あたし、
二時間目から学校行くからね」


「あぁ」



素っ気ない
雄介の返事に

あたしも流れる川を見つめた。



緩やか川の流れと

時折吹く涼しい風。


秋がそこまで来ているようだ。



「な?
東京で何かあったんだろう?

もしかして桐谷先輩のことか?」



遠くを見ながら、
言葉にする雄介に、

あたしは素直に

「うん…」と答えた。



「やっぱり……。

萌香が落ち込むことって
桐谷先輩だよな」



「………」



言葉が出ない。

今のあたしは
仕事が順調だからこそ、

次へのステップを考えてなくてはならない。


それなのに、
悩むことと言ったら、

恋愛しかないなんて……。




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