あたし、脱ぎます!《完》



あたしも
ずっと自信が無かった。


胸が大きいことで
「巨乳」とか
「デカパイ」とか

あだ名を付けられた。


それが嫌で
必死に存在を隠そうとした。


そんな
あたしが
グラビアアイドルをやっている。


その道筋を
切り開いてくれたのは
今、となりで
運転をしている真鍋さんだ。


自分が
変われたのは、
自分だけの
力ではない。


真鍋さんが
敷いてくれた
レールに乗ったことで、
変われたのだ。


だけど、
あたしはこの人を
裏切ろうとしている。


そう思うと、
小さく溜め息が漏れた。



「どうしたの?」



「え?」



「いや、
今、溜め息ついたでしょ」



「……あ、はい」



「もう嫌になった?」



「え?」



「この仕事、嫌になった?」



素直に
「はい」と言えるほど、

度胸はない。


黙って、
返答に困っていた。



「萌香ちゃん?

もし
嫌になったら
正直に話して。

こちらも
萌香ちゃんのためだけに
動いているわけではないんだ。

追い詰めることは
しないから。

悩みがあったら
何でも話して欲しいんだ」



厳しくもあり、

優しいフォロー。


事務所には
千葉優衣ちゃんを始め、

売れっ子の
タレントやモデルがいる。


それに
女優になりたい
女の子の履歴書が

毎日、
何十通も送られて来る。


光る原石を
見つけたら、

今のあたしなんて、

すぐに見放されてしまうだろう。

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