あたし、脱ぎます!《完》
「ね?
色々って、何があったの?」
何があったのか、気になってしまう。
「実は
俺、オーディション会場で
スカウトされたんだよ」
「スカウト?!」
「だから
昨日は漫喫に泊まって、
今日は
そこの事務所に行って来たんだ」
「凄い!!
雄介の音楽を
気に入ってくれた人が居たんだね!!」
「……だけど、
ちょっと
気になることもあるんだ」
何故か
しんみりした声を出す雄介に
「どうしたの?」と
問いかけた。
「レッスン代や
デビュー準備金で
50万円かかるって言われたんだ」
「50万?
それを
雄介に負担しろって?」
あたしの声に
雄介は「あぁ」と力無く答えた。
「な?
萌香って
スカウトされたとき、
お金払ったか?
そういうのって普通なのか?」
「あたしは
そういうの分からない。
でも
あたしはお金払ってないよ。
山梨からの
交通費も事務所が
負担してくれているし、
ギャラも
口座に振り込まれているみたい」
あたしのギャラは
すべてお母さんが管理していた。
高校生のうちは
保護者がギャラの管理を行うのが
事務所の方針だった。