あたし、脱ぎます!《完》
「そっか。
全然扱いが違うな。
俺、
50万なんて用意出来ないよ。
親に頼むしかないな」
頭を抱える
雄介の前に
ハンバーグが運ばれた。
湯気が美味しさを引き立てている。
「とりあえず食うか!!」
食欲が
勝っている雄介に
「うん」と答える。
勢い良く食べる
雄介を見ていると
何だかホッとした。
雄介の
音楽を認めてくれた人、
50万円を払ったら
彼の夢を叶えてくれるのかな……。
食事に済むと、
あたしは真鍋さんに電話をかけた。
雄介を
スカウトした事務所が
ちゃんとしたところか、
真鍋さんに
訊いたほうが良いと思ったからだ。
雄介が
スカウトされた経緯から、
50万円かかる話まで
細かく伝えると、
「そうだな。
普通スカウトしたら
お金を取らないよ。
でも
音楽系の事務所は
また特別だからね。
今、
音楽系の事務所のスタッフに
そこの事務所を知っているか
訊いてあげるから、
少し待ってくれる?」と言って、
電話を切った。
向かいで
話を聞いていた雄介も
「悪りぃな」と言いながら、
浮かない表情をする。
スカウトされたと喜んでも、
お金がかかると言われたら、
誰だって
複雑な心境になるだろう。
一番、
やりたい音楽の夢が
お金を出せば叶うなら、
期待がある分、
どう答えて良いのか
迷う気持ち……
分かる気がする。