あたし、脱ぎます!《完》



「……真鍋さんの話だと、

お金を要求して、
放ったらかしにする事務所があるんだって」



「そっか」



「雄介のことを
ちゃんと分かってくれる
事務所と出会えたら良いね……」



肩を落とす雄介に
かける言葉が見つからず、

ありきたりなことしか言えなかった。



「萌香が良いよな。

事務所の人が
ちゃんと萌香の良さを引き出してくれて」



「うん。

事務所の人には感謝してる」



「俺は才能もないし、

山梨に
すっ込んでろってことかぁ」



投げやりな言葉しか出て来ない雄介に

「そんなことない」と
声をかけた。



「昨日の言ったことは忘れてくれ。

こんなカッコ悪りぃことになるとは思わなかったから」



返す言葉が見つからなかった。

雄介は雄介で
良いところがたくさんある。


音楽だって、
センスがあると思う。


文化祭で
盛り上がっていた
雄介のライブは確かなものだった。



また
重たい空気が流れ、

お店を出ると
雄介は「あぁ~あ」と

大きく伸びをした。

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