あたし、脱ぎます!《完》


___
_____
________


「本番5分前です」



スタッフの声が
楽屋通路に響いた。


白のワンピースを着たあたしは、

ERIさんに
メイクを直してもらい、

光が差す
ステージを見つめていた。



リズミカルな
音楽が流れ出すと、

司会の近藤さんが

「こんにちは♪」と
声を上げて、

ステージに飛び出した。


近藤さんの登場に
大きな拍手が沸き上がる。



「今日は
永井萌香ちゃんのDVD

『永井萌香
first fantasy』の

発売イベントにお越しいただき、
ありがとうございます」



近藤さんの
オープニングトークで
会場の
雰囲気が温まった頃、

「そろそろ本番です」と声がした。



「じゃ、萌香ちゃん。

頑張ってきてね」



真鍋さんの声に
「はい」と頷き、

あたしは胸元に手を当てた。



ドキドキする鼓動は、

たくさんの人が
集まっている緊張なのか、

未来への答えを
見つける緊張なのか……

分からない。


でも高鳴る鼓動は、
確実に
あたしの手に伝わっている。



スタッフの誘導で
ステージ横にスタンバイする。


近藤さんが
マイク片手に
進行している姿が目に入り、

また大きく深呼吸した。



……あたしは、

あたしでいるだけ。

< 353 / 383 >

この作品をシェア

pagetop