あたし、脱ぎます！《完》

顔を下げ、
小さく手を上げた。

転倒で
泥だらけになったシューズに
視線が落ちる。


名乗り出たあたしに
安堵するクラスメイトとは対照（ﾀｲｼｮｳ）に、

怖くて翠の顔を見ることが出来ないあたし。



「また？！
萌香はどうしてそんなにドン臭いの？

別に太っているわけじゃないし、
スポーツだって普通に出来るのに、
長縄飛びだけ

どうして引っ掛かるの？」



チラッと顔を上げると、
仁王立ちしている翠がいた。

顔は完全に呆（ｱｷ）れている。


何も答えないあたしを
可哀そうと思ったのか、

周りの女子は
「仕方ないよ」と翠を宥（ﾅﾀﾞ）め、

その場に腰を下ろした。


となりのクラスは
７２の掛け声と共に、

体力の限界だったのか、
１人の足がもつれ、

そこで終了となった。


１５回目で
引っ掛けたあたしと、

７２回目で
引っ掛かった女の子とは訳が違う。


結果、
うちのクラスの長縄跳びは

最下位となり、

無言で待機場所に戻った。