あたし、脱ぎます!《完》



あたしたちは
渋谷の駅を目指して歩き出した。


夕方になると
これから遊びに繰り出す若者と

何度も肩がぶつかった。


GWのこの街は
これからもっと賑やかになるんだ。



「あの!!!!

すいません!!!」



足早になるあたしたちの背後から

男性の声が聞こえた。


少し枯れた息切れ交りの声。


あたしたちは
同時に振り返ると、

黒のスーツに
髪を短くした
30代後半の男性が立っていた。

そして
立ち止ったあたしたちに

「良かったぁ」と
肩で息をしながら、

胸ポケットを弄(マサグ)った。



名刺を
一枚取り出し、

「突然、ごめんね」と差し出した。



その名刺を手に取り、

覗き込むあたしと佳代。



「ビックリさせちゃったね。

僕、
芸能プロダクションを経営している
真鍋と言います」



「「はぁぁ…」」



 ㈱コットンキャンディ

 代表取締役 真鍋慶



真鍋さんは
額にハンカチを当てながら、

あたしに問いかけた。

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