あたし、脱ぎます!《完》



「どうぞ。
中へ入ってください」



真鍋さんが
ドアを開けると、

「お疲れ様です」という女性の声が聞こえた。



12畳ほどの
オフィスには、
5つの机があり、

その横には
黒の革張りのソファとガラステーブルがあった。


グルっと見回すと、
壁には

千葉優衣ちゃんの
CMや映画のポスターや

NAMIEちゃんが
表紙になった雑誌のポスター、

そして
森下くるみのカレンダーなどが飾ってあった。



「こういうところ、
初めてだからビックリしたでしょ?

みんなうちの事務所の子たちだよ。

とりあえず、
お父さんと萌香ちゃんも座ってください。

……志村さん、
お茶出してくれる?」



あたしとお父さんは
ソファに腰を下ろした。



「萌香ちゃんは、
うちの事務所で知っている子いるかな?」



「はい。
千葉優衣ちゃんやNAMIEちゃんも知っています。

森下くるみちゃんも
雑誌で見かけたことがあるぐらい……ですね」



「そっかぁ。それは良かった。

森下は
今、売り出し中の
グラビアアイドルで、
あと一年ぐらいしたら、
女優に転身させて行こうと思っているんだ。

本人も
芝居をやりたいと言っていてね」



……森下くるみ。



淳平くんが見ていた雑誌に載っていた子。


正直、
そのイメージしかない。


あたしの中で、

彼女の名前を聞くたびに
そのことばかり考えてしまう。


ライバル視しているの?


あたしなんか、
ただの素人なのに……。

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