引きこもり王子
「俺、行く」
少ししてから、彼は荷物を持って立ち上がった
「あ、ちょっと待って!!」
あたしは、歩き出した彼の背中に向かって叫んだ
「どこ行くのさ」
「帰る」
「何で?」
「だって邪魔だろう?」
彼は、振り返ってあたしに向かって
「俺は、邪魔者だろう?」
同じセリフをまた繰り返した
あたしは、黙って彼の顔を見た
初めて人の顔をこんなに真面目に見た気がする
彼の目は、何か引きつけられるように感じる。ずっと見つめていたら、何かを見透かされそうな…
だがその目は悲しみでいっぱいだった
「邪魔者じゃないよ」
あたしは立ち上がって彼の近くまで歩いた
いきなりあたしが近くに来て、少しびっくりしたようだ。そして怯えている
「だってあたし、ずっと薗田君と友達になりたかったんだ」
あたしは彼の手をとった
彼はビクッとしたが、あたしは気にしない
「それに、お礼も言いたかった」
「…」
彼は黙ってあたしの話を聞いていた
「あの時、助けてくれてありがとうね」
「…いいよ。」
「それでさっきも言ったけど、あたしは君と友達になりたいんだ。良ければ友達になってくれない?それも一番信頼できる一番近い場所がいいんだけど」
そう言った。そしたら彼はこう言うんだ
「俺なんかつまんないよ?それでもいいんなら…ね」