引きこもり王子

「俺、行く」

少ししてから、彼は荷物を持って立ち上がった

「あ、ちょっと待って!!」

あたしは、歩き出した彼の背中に向かって叫んだ

「どこ行くのさ」

「帰る」

「何で?」

「だって邪魔だろう?」

彼は、振り返ってあたしに向かって

「俺は、邪魔者だろう?」

同じセリフをまた繰り返した


あたしは、黙って彼の顔を見た
初めて人の顔をこんなに真面目に見た気がする

彼の目は、何か引きつけられるように感じる。ずっと見つめていたら、何かを見透かされそうな…
だがその目は悲しみでいっぱいだった

「邪魔者じゃないよ」

あたしは立ち上がって彼の近くまで歩いた

いきなりあたしが近くに来て、少しびっくりしたようだ。そして怯えている

「だってあたし、ずっと薗田君と友達になりたかったんだ」

あたしは彼の手をとった

彼はビクッとしたが、あたしは気にしない

「それに、お礼も言いたかった」

「…」

彼は黙ってあたしの話を聞いていた

「あの時、助けてくれてありがとうね」

「…いいよ。」

「それでさっきも言ったけど、あたしは君と友達になりたいんだ。良ければ友達になってくれない?それも一番信頼できる一番近い場所がいいんだけど」

そう言った。そしたら彼はこう言うんだ

「俺なんかつまんないよ?それでもいいんなら…ね」
< 9 / 16 >

この作品をシェア

pagetop