フィルムの中の桜と私
急に俊也はカメラを下ろすと美由の隣に無造作に座った。
「美由、オレ将来本気で写真家になりたいんだ」「なによ、ただの趣味が今度はカメラで生きていきたいっていうの?そんな甘くないんじゃない?」
美由は俊也に背を向けて返す。
「私には良く分からないけどね。そんなに夢中になる意味が」
「美由、お前はどんな時にアルバムを開く?」
俊也は唐突に聞いてきた。
「そりゃ~思い出に浸りたい時とか?」
「普通はそうだ。写真てその時にしかないものを一枚のフィルムに収めて、しばらく経ってから見た時にその時の思い出を楽しむものだ。だけどオレはもう一つ逆の楽しみ方があると思う」
俊也はここで言葉を切ると、青空を見上げながら続け始める。
「未来を楽しみものってことかな、簡単に言うと」
「意味分からないんだけど」
美由は尚も背を向けながら芝を軽く手のひらで撫でてみる。
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